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堀さんは愛知県あま市のKライン・ケアセンター美和さん
で音楽療法士としてお勤めですが、まず音楽療法とはどういうものか詳しく教えてください。
音楽療法というのは、音楽が持つ生理的・心理的な効果を利用した心理療法です。歌を歌ったり、楽器を演奏したり、音楽に合わせて体を動かしたりしながら、対象となる高齢者や障害者の方々とのコミュニケーションを図り、機能回復や生活の質の向上を促進させます。私が現在こちらで行っているのは、ギターやピアノを伴奏に使って、まず季節の歌を歌い、そのあとは歌いながら体を動かしてもらったり、簡単な楽器演奏をしてもらったりしています。利用者様はご高齢者の方がほとんどなのですが、やはり歳を重ねると何かをしながら他の何かをするというのが難しくなってきます。ですから、その練習のために歌いながら簡単な体操をしてもらったり、ハンドベルやマラカスなど体を動かす楽器を使って音楽を楽しんでもらっています。



音楽療法は毎日行っているのですか?
音楽療法はあまりやりすぎると飽きられてしまいますので、月3回を限度にしています。例えば今月の3回分を月・金・土の曜日に割り振ったら、来月の3回は火・水・木に割り振ることにしています。Kライン・ケアセンターは日帰りの介護施設、よく言う「デイサービス」の施設なのですが、毎日利用される方が違いますから、2ケ月のうちで日曜日以外の曜日が必ず1回はまわってくるように配慮しています。私は音楽療法士以外にも生活相談員や介護の仕事をしていますので音楽療法がない時も皆様のお世話をさせていただいてます。
音楽療法をやる時は、音楽療法士の私だけでなく他のスタッフの協力が欠かせません。話を盛り上げてもらうためにも、毎回1人は一緒に前に出てもらって進行のお手伝いをお願いしています。
事前準備が大変そうですね?
スタッフとは、綿密な打ち合わせは行わないようにしています。だいたい1週間くらい前に、他のスタッフに当日演奏する曲と、おおよそのイメージを伝えたら、あとは簡単な打ち合わせをするくらいです。というのも、あまりガチガチに決めてしまうと皆さんの自然な状態を引き出せなくなってしまうからです。あくまでも自然な感じで、音楽と触れ合っていただいて、心から楽しいと感じていただくことが大切だと考えています。
選曲については、スタッフに「これウケそうですか?」って聞くことがあります。音楽療法の対象者である60代から90代までの方がよく知っている歌を選ぶわけですけれど、20代の私には知らない歌がたくさんありますので、スタッフに軽く参考意見を聞いています。ちなみに私のレパートリーの中での人気曲は「青い山脈」「リンゴの唄」「銀座カンカン娘」など昭和20年代のものが多いです。

ところで、堀さんが音楽療法士になろうと思ったのはなぜですか?
子どもの頃からずっと音楽が好きで、音楽を仕事にできればいいなって思っていました。と同時に、人の役に立つ仕事にも関心を抱いていました。それで、行く高校も決まっていた中学3年生の3月にインターネットで調べてみたんです。そうしたら世間には音楽療法士という仕事があるというのを初めて知って、「これだ!」って思いました。
でも、高校1年の時に進路相談で「音楽療法士」になりたいことを担任の先生に話したら、私が小学校6年生でピアノをやめていることから無理ではないかと言われたんです。それで志望を変えて臨床心理士になろうと思ったんですが、高校2年の担任の先生に何になりたいかを聞かれて「臨床心理士になりたい」と話したら、すぐさま「本当は何になりたいの?」って言われたので、本当は音楽療法士になりたいことや、ピアノを習い続けていないのであきらめたことなどを話しました。
先生は音楽療法についてよくご存知だったみたいで、音楽療法士はピアノの技術だけが重視される仕事ではないことなども教えていただき、もう一度音楽療法士になろうと考えるようになりました。
音楽療法士を再び志望するようになって、音楽療法士の勉強ができる学校も調べられたと思うのですが、
その中で大垣女子短大を選ばれた理由は何だったのでしょうか?

その高校2年の担任の先生から、大垣女子短大で音楽療法士の勉強ができることを教えていただきました。また、オープンキャンパスに行くことを勧められたんです。それで高校3年の夏にオープンキャンパスに行って模擬授業を体験しました。この時の授業が楽しかったんですよ。トーンチャイムを使って、アイコンタクトと動作だけで音を受け渡すという模擬授業だったんですけど、音だけでコミュニケーションが広がっていくのがすごく感動的でびっくりしたんです。
実は音楽療法が勉強できる他校のオープンキャンパスにも参加したのですが、どこも音楽の芸術性に重点が置かれているような気がして、私はそこに物足りなさを感じていました。私が求めている「人と人とのつながり」を意識した音楽療法の授業は大垣女子短大以外にはありませんでした。それが大垣女子短大を選んだ理由です。試験は高校の吹奏楽部で担当していたオーボエで受けました。ピアノは短大合格後にまた習い始めました。
短大時代のことで何か思い出に残っていること
はありますか?
私が音楽の楽しさをあらためて知ったのがポピュラーミュージックの授業です。ゴスペルを歌ったり、ブルースのリズムを体で感じたり、今まで触れたことのなかった音楽に出会って、音楽の持っている力を知りました。それまではJPOPやクラシックや吹奏楽の音楽ばか聴いていたのですが、この授業のおかげでジャンルの幅が広がりました。たまに現場で「昔はよくジャズを聴いてたんですよ」って言われて、そこからジャズの話をしたりしてコミュニケーションがうまくいくことがあるのですけれど、それにはこの授業がとても役に立っていると思います。

音楽療法コースでは、どのような授業があって、何が役立ちましたか?
音楽が好きだったことに加えて、介護のような福祉の仕事にも関心がありましたので、2年目から専門的に学べる音楽療法コースのカリキュラムはどれも興味深々でした。実習も豊富にありますし、授業内外のボランティア活動にも参加できるのがとても良いと思います。とにかく、いろいろな現場をつぶさに見て少しでも経験を重ねていくことが大切なんです。経験するチャンスは短大の先生や岐阜県音楽療法士の先生からいただきました。先生や友だちと一緒にボランティアに参加して、施設の人たちとの温かいふれあいがあって、帰りにはみんなでアイスを食べながら反省会をする。これが何よりも充実した時間でした。


音楽療法士になるために、就職活動はどのようなことをされたのですか?
音楽療法士を採用する施設というのは限られています。音楽療法士は総合病院やデイサービスの福祉施設等で募集していますが、私の場合、大阪にある病院の音楽療法士の採用に書類選考で落とされてからは、デイサービスの音楽療法士に頭を切り替えました。そんな中でKライン・ケアセンターは真っ先に考えた施設です。就職活動をはじめる前に、ボランティアをさせてもらったことがあって、その時にまず「雰囲気の良い施設だなあ」と思いました。利用者様とのやりとりも楽しかったですし、音楽療法をする時のスタッフの協力がすごかったんです。それは今でも変わってないのですが、本当に楽しく盛り上げてくれるんです。
あともう1点、大事なことなんですが、音楽療法をレクリエーションとしてではなく、リハビリの一環として位置づけていることです。例えば、音楽療法には認知症の進行を遅らせる効果が期待されるのですが、そのことを踏まえた上で明確な目的の下、音楽療法が続けられるというのは非常にやりがいのあることなのです。期待が持てる、だから他の施設よりもやれる機会が多いということにもなります。レクリエーションとしての位置づけでは「はい、やりました」「楽しかったね」だけで終わってしまいますので・・・。

音楽療法士として堀さんは今後何を目標に据えていらっしゃいますか?
1年目はただ「音楽療法がしたい」「介護がしたい」という思いだけでしたが、今年2年目を迎えて、一人ひとりにどうやって接すれば良いのか、そのアプローチの方法を考えるようになりました。音楽療法士以外に社会福祉士主事任用資格や訪問介護員2級の資格を持っているのですが、現在は介護福祉士の資格取得に向けてがんばっています。この資格は3年の実務経験が必要になりますので、毎日のお仕事を大切にすることを心がけています。利用者様がその日一日を楽しく快適に過ごしてくださるように努めます。音楽療法士としては、これまで35人から40人くらいを対象にしていましたが、今後はもっと個別に関われる機会を増やしたいなと考えています。
まだ2年目なんですが、周りの人から現在の仕事が「合ってるね」とか「天職だね」って言われます。私自身もそう思っているので、これからも長く楽しみながら続けていきたいですね。
お仕事のことで悩みや不安はありませんか?
Kライン・ケアセンター美和では音楽療法士が私一人なので責任を感じますが、幸いにも他のエリアのKライン・ケアセンターに音楽療法士がいますので情報を共有し合うなどして改善に努めています。皆さん大垣女子短大の先輩なので、とても話しやすいんですよ。
あと、自分の知識で解決できそうにない問題が出てきたら短大の先生に相談するようにしています。近くに信頼できる先生や先輩がたくさんいるので心強いです。私も早くその一員にならないといけないなと思います。
最後に、堀さんのように音楽療法士や福祉の仕事を志望している人に、何かひと言お願いします。
授業で学んだことがそのまま実践で活かせる職場なので、毎回の授業を真面目に受けてください。あと、先ほどもお話をしたように、ボランティアの経験はとても役に立ちますので、もしボランティアを「お願いします」って声をかけられたら、どんどん積極的に参加してください。
現在のお仕事が天職という堀さん。明るく元気で、やさしい心遣いがうかがえるインタビューでした。ありがとうございました。